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スタートアップカフェ

2021年04月13日

古着屋TRIANGLE 松前桃子さん – 長野スタートアップカフェvol.2イベントレポート3/4

起業・創業を身近に感じてもらうためにスタートした「長野スタートアップカフェ」。自身の生き方や働き方の選択肢の1つとして、起業・創業を考える機会を提供してきました。

2021年1月には、長野県立大学とのコラボ公開講座としてオンラインイベントを開催。

『どうして学生のうちに起業したの?〜長野で起業した大学生たちのぶっちゃけ座談会〜』と題し、起業をした現役大学生3名をゲストに迎え、事業やキャリア、そして地域や社会とどのように向き合っているのか、話を聞きました。

2018年4月に開学した長野県立大学では、自主的にプロジェクトを立ち上げたり起業をする学生が増えています。彼らは、なぜ起業という選択肢を選んだのでしょうか。県内外から約50名が視聴したイベントの模様を、全4回でお伝えしています。

第3回の本記事では、長野県内の古着屋2店舗の立ち上げ・運営に携わる松前桃子さんの発表をレポート。1年生のうちから起業に向けた活動をスタートさせた松前さんたちですが、そのビジネスモデルは県内外のメディアで数多く取り上げられるなど、大きな注目を集めました。


松前 桃子(まつまえ ももこ)

2000年長野県松川町生まれ。長野県立大学グローバルマネジメント学部に1期生として入学。大学ではソーシャルビジネスについて学んでいる。2019年8月に長野市権堂にて新しいシステムの古着屋「TRIANGLE」をオープン。2020年4月から一年間休学し地元の飯田下伊那地域で活動している。同年9月にTRIANGLEの2号店となる「古着屋 ボンボン」を飯田市でオープン。その他にインターン中の業務として、「信州たかもり熱中小学校」の運営にも関わっている。


仕入れゼロ!寄付で服を集める古着屋


通常の古着屋では海外から買い付けをしたりするのが普通なんですけど、私たちの古着屋はタンスの肥やしになっていたり捨ててしまう予定の衣類を、寄付という形で集めています。服の見た目や使い勝手だけではなくて、その服の持ち主や服に詰まった思い出について、次の持ち主に伝えられたらいいな、と思って古着屋をやっています。

私が古着屋を始めたのは、大学受験期の経験がきっかけです。勉強しなきゃいけないのに全然手につかず、ずっとYouTubeを見てしまっていて。なにもできない自分が嫌だなあと感じていました。そこから変わりたいという思いがすごく強くなって、進学後は「せっかく大学入ったし」「一期生だし」とにかくなにかやってみたい、起業してみたい、と考えるようになりました。そして、入学2ヶ月後の6月には、古着好きの友人2人と起業に向けての活動を開始します。

TRIANGLEを一緒に立ち上げた百瀬友奈さん(写真左)と青木寛和さん(写真中央)。松前さんと同じ長野県立大学グローバルマネージメント学科の1期生です

なんで寄付による古着屋を始めたのかというと、ファストファッションの裏側を描いたドキュメンタリーを観たことが大きく影響しています。服を安く買える理由には過酷な労働環境をはじめとする社会問題が関係していることを知ったときに、なにか自分たちらしい新しい選択肢を作ることができたらいいなあと思いはじめました。その後、古着屋開業についていろんな人に話すなかで生まれた「仕入れ0円でやってみる」というアイデアを実践していくことになります。

原動力は古着を介して出会う方々との交流

まずは自分たちでお店を持つ前に善光寺の近くにある『シンカイ』というお店でインターンをしながらポップアップをさせてもらったり、辰野町にある古着屋さん『O to &(おとと)』では古着の寄付の呼びかけをさせてもらいました。実際にやってみると、地域のお年寄りの方々がすごく喜んでくれたんです。目を輝かせながら服に詰まった思い出や、着ていた当時の話をしてくださって。自分たちも楽しいし、寄付してくださる方も喜んでくれるのを実感して、長野市でもやってみようと思いました。

2019年8月に長野市権堂にオープンした古着屋TRIANGLE。松前さんたちに寄付された洋服がこの場所で学生をはじめとする次の世代へと引き継がれています

約2年のあいだに2店舗をオープンしたのですが、辞めようかなと思ったのは、同じようなことをずっと回しているような感覚になったときですね。寄付してもらう、売る、の繰り返しのなかに楽しさは詰まっているんですけど、飽き性だったり新しいことを始めたいとすぐ考えてしまうタイプなので、このサイクルに囚われなくてもいいのかな、と思ったことはあります。

それでもモチベーションを維持できているのは、色々な人と出会うなかでお店をもっと面白くできると思えた体験があったり、お客さんや寄付してくださる方からの「来てよかったです」といった声のおかげです。

関わる人みんなが喜べる仕組みへ

仕入れが0円なので売上の使いみちが気になると思うんですけど、将来的には古着を寄付したら、地域のお店の商品券などのお返しがもらえるような仕組みにしていきたいと思っています。古着という不要資産が循環されることで生まれるハッピーなエコシステムづくりに取り組んでいきたいです。

活動のきっかけこそファッション業界の課題解決だったのですが、「それ本当にやりたいの?」って聞かれたとき、実際は全然やりたいと思っていないことに気づいて。繰り返しになりますが、自分たちのモチベーションになっているのはお客さんや寄付してくださる方が喜んでくれることにあるので、大きな課題の解決よりも関わってくれる人たちにもっと喜んでもらうために、今後も挑戦を続けていきたいと思っています

第4回レポートはこちら
トークセッション – 長野スタートアップカフェvol.2イベントレポート4/4

第1回レポートはこちら
ODDO coffee 小倉翔太さん – 長野スタートアップカフェvol.2イベントレポート1/4

第2回レポートはこちら
キキ 九里美綺さん – 長野スタートアップカフェvol.2イベントレポート2/4