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2022年04月07日

伴走支援プログラム支援対象者インタビュー:在日外国人向け日本語教室「Musubi」/代表・目黒健太郎さん

「長野市スタートアップ成長支援事業」は、長野市内で事業展開を希望する創業予定者や、既に活動する事業者に向けて外部メンターによる伴走支援を行う3ヵ月間のプログラム(伴走支援プログラム)です。

本記事では、プログラムに参加した事業者にインタビューし、現在取り組んでいる事業とプログラム参加前後の変化についてご紹介します。今回ご紹介するのは、会社員として働きながら日本在住の外国人向けに日本語教室の事業展開を考える、「Musubi」の目黒健太郎さんです。

きっかけは恩返しではじめた日本語教室

ーまずは、目黒さんについて教えて下さい。
僕は神奈川県藤沢市出身で、元々長野には縁もゆかりもなかったんです。去年の夏に妻と移住を検討しはじめ、長野、山梨、千葉が移住先の候補にあがりました。たまたま「NAGA KNOCK!※」や本プロジェクトを知ったご縁で、思い切って長野への移住を決めたんです。現在は東京の企業に勤めていて、長野移住後のタイミングでフルリモートワーク可能なベンチャー企業に転職し、自分の事業を同時並行で進めていけたらと考えています。
※長野市主催、特定非営利活動法人ETIC.が行った首都圏在住者向けの社会起業家創出プログラム

ー今構想中の「Musubi」の事業内容について教えてください。
日本在住の外国人に向けて、履歴書添削と面接練習を含めた日本語教室の事業化に向けて動いているところです。元々会社の研修で二年半ほど海外に行っていたときに、現地の方に英語を教えてもらった恩返しに無料で日本語教室を始めたことがきっかけです。初めての日本語教室でしたが、思いのほか人が集まったり、感謝されたりととても楽しい経験でした。日本に帰ってきてからも週1ペースでオンライン上で日本語教室を続け、次第に事業化を考えるようになりました。

ー海外で現地の人に日本語を教えた経験が事業に結びついたんですね。
はい。本格的に事業を意識するようになったのは、帰国後に新聞記事を読んだりニュースを見るなかで外国籍の子ども向けの日本語習得に課題があると目にしてから。例えば、小学校低学年のときに親の仕事でこっちに来ても日本語が話せずいじめられたり、学習についていけないという問題があるようです。公立学校だと解決することが難しいらしく、このような社会課題を解決しながら、収益化につながる仕組みをつくれないかと考えるようになりました。
また、無料で日本語教室をやっているなかで「お金をとれるよ」と言ってくれる人も多くて。というのも、参加してくれる方は英語の先生が多く、自分が教えてお金をもらっているので教えられることへの対価に対して的確にアドバイスをしてくれるんです。「どこからお金をもらおう」「どんな課題が大きいか」と事業化を考えたときに先ほどの子どもたちのニュースが思い浮かびました。

事業内容をメンターと一緒にさぐっていった

ー今回プログラムに参加した経緯を教えてください。
自分の考えた事業プランの実現可能性を確かめたかったのと、マーケティングの方法を知りたいと思ったからです。また、プログラムに参加することで長野市の方とのネットワークをつくったり、皆さんから知見をいただいて、無償でやっていた自分の活動をどうやって有償化するか仕組みづくりを一緒に考えていただけたらという思いでした。

ー実際にプログラム中に印象に残ったできごとはありますか?
事業化に向けてマーケティングを進める上で、Facebookの広告を使ってアンケートをとる方法を教えていただきました。日本語学習についてのアンケートを行おうと、日本在住で日本語以外の言語を使う子育て世代の母親をターゲットに設定。その結果4063人にアンケートが届きましたが、実際の回答数は13件と少なくて。回答をそこまで得られなかったということは、ニーズがそこまでないのではないかとか、ニーズがあったとしてもアプローチの仕方が間違っていたりとか、様々な気づきがありました。結果は芳しくなかったですが、自分ひとりだとアプローチ方法すらわからない状態だったのでよい経験でしたね。メンターの方との面談や市民サポートセンターの方へのヒアリングのなかで、最終的に「子ども向けの日本語教室はそんなにニーズがない」という話になり、現在の事業内容にたどり着きました。

ープログラム中に軌道修正を行ったのですね。
これまでzoomを使用して行っていた日本語教室に加え、大人向けの履歴書の添削や面接練習を実施することにしたんです。日本で働いていてそれなりに日本語が話せる人でも、ビジネスマナーや敬語など細やかな日本語を使える人はまだまだ少数だと思うので、ニーズがありそうだと感じていて。メンターの方には社会課題を解決しつつ、収益化を見込める方法を一緒に考えていただきました。

今までになかったトライアンドエラーの精神を養った

ープログラムを終えて、率直な感想を教えてください。
自分にはない視点を得られたことは、大きな変化ですね。金融系の企業に勤めているので、事業計画は内容を決めきってから書くものだと思っていました。ところが、メンターの方に面談のなかで「事業をはじめる前にお客さんの声聞いて」とよく言われて。お金を多少かけてでも、まずはリサーチをしてだめだったら次にいくトライアンドエラーの考え方はプログラムを通して教えていただいたことです。今考えると、事業をスタートしてからこの工程をひとりで進めていくのは大変だと感じますね。

ー長野への移住後はどのように動く予定ですか?
まずは、教育委員会の方をはじめ外国人移住者に携わる長野市の関係者の方や、日本語教室をおこなっている方、NPOで在日外国人の方向けに活動されている方のところへ行き、実情をヒアリングできたらと思っています。僕自身、今まで趣味ベースで日本語を教えていたため、本当に日本語が必要な人たちの思いや抱える課題についてこれからヒアリングを重ね、サービスの提供方法やお金の流れを考えていきたいですね。

全てWEBを通じてだったため、メンターの方との写真、活動写真はございません。
「最初は小さくはじめて、大きくしいけそうであれば少しずつ伸ばしていきたい。スタートアップよりもスモールビジネスに近い事業を考えています」と目黒さんは言います。二拠点居住が増えている昨今、目黒さんの事業は長野発の週末起業の実例として参考になるはずです。