Innovation

地域共創ラボ

2021年03月30日

【2020地域共創ラボ#01レポート】イノベーターとしてのマインドセットを立ち上げる

2020年11月14日、善光寺大勧進を舞台に開催された初回の地域共創ラボ。サービス業や金融業、製造メーカーなど、年齢もバックグラウンドも様々な21名の参加者が、イノベーターとしてのマインドセットの立ち上げに挑みました。

講師は “R事業脚本家”の渋谷健氏。経済産業省などの政策事業、北九州市などの地方創生事業、民間事業に関する事業プロデューサー/ファシリテーター として第一線で実践し、培ってきたイノベーションのノウハウを惜しみなく提供していただくことになりました。

「ハイ・ドリーム」を意識し続けよ

会の冒頭、まずは今自分が感じていること、自分が実現したい状態(=ハイ・ドリーム)、自分が避けたい最悪の状態(=ロー・ドリーム)を書き出すことに。直感的に自分の内面を感じ取り、言葉として表現する時間を取りました。

なぜ「ハイ・ドリーム」「ロー・ドリーム」という概念が重要なのか。そんな疑問に答えるために、それらの概念が与える力を体感するワークを実施。

参加者同士でペアになり、一方が指で固く輪をつくり、もう一方がその輪を手でこじ開けようと試みます。その際に、苦手な人をイメージして高圧的に「開くな!」と指図されるパターンと、好意的な人をイメージして優しく「開かないで」と語りかけられるパターンを比較。すると、ほとんどの参加者は、前者だと比較的簡単に輪がほどけるのに対し、後者のパターンになるとペアがどれだけ力を入れてこじ開けようとしても開かなくなりました。

自分が望むハイ・ドリームを明確にして焦点を当て続けた方が強い力を発揮できて、逆に自分の想いと反するロー・ドリームを回避することに力を割くとパフォーマンスが低下する……参加者たちはそんな事実を、身体感覚を持って実感しました。

解決困難かつ、超複雑な現実に挑む

ところで、なぜイノベーションが求められるのか。紛争地帯の少年兵が置かれている現状をシリアスに突きつける短編映画(「Ninja&Soldier」)の視聴を交えながら、SDGsやCOVID-19、人口減少社会など、複雑で解決困難な課題が待ったなしに訪れている社会状況を紹介。環境の変化に飲み込まれ「消滅」するか、環境を受け容れ適応して「進化(イノベーション)」するか、今私たちにはいずれかの選択肢を迫られていると渋谷氏は語ります。

そして、イノベーションを起こそうという現場では何が起きるのか、参加者全員でイメージすることに。

未来志向↔実績志向、慎重派↔推進派の2軸でマトリクスを作成し、各象限にペルソナを想定。イノベーションを起こそうと行動したときに、さまざまな立場・価値観の彼/彼女らから同時に意見を浴び続ける状況を擬似的に再現しました。

参加者は、その渦中の中で感じることをフィギュアやイメージ写真、レゴブロックなどのアイテムを用いて直感的に表現します。

多方から同時的に意見を浴び続ける状況が、5年、10年と続いたとき、不確実性の高い状況に対応できず、しがらみにとらわれた個人は、ただ現状に依存しつづけるしかなくなり自己喪失状態が起きやすくなる。そして時間軸が進むごとに問題は蓄積され絡み合い、周辺環境の変化も相まって問題はさらに解決困難で超複雑なものに変わっていく……そのように向き合わなければならないタフな現実を、参加者同士で改めて認識。そして、そのように現状を追認していくだけになると重要な“気づく力”が失われてしまう、と渋谷氏は提起します。

そのような現実に対抗するためには、オーケストラがハーモニーを創るように社会全体で価値を創り、進化していく世界観をつくっていかなくてはならないと、渋谷氏。そして、その世界観を構築する個人となるために、利他的な創発の実践を行う「コンダクターシップ」の実践を求めました。

参加者は自分の活動を振り返り、渋谷氏が提示する

「それは本当に世界に必要か?」

「そこに無条件の信頼はあるか?」

「そこに自分の存在理由はあるか?」

「そこに全身全霊で向き合えているか?」

「そこに人生の喜びはあるか?」

「明日死ぬとしても心から笑えるか?」

といった問いに自問自答しながら、自分の現在地を確認。冒頭に思い描いたハイ・ドリームとのギャップや距離感を強く認識しました。

社会変容のキーファクター「トラスト」

後半では、メタ認知を獲得するセッションを実施。

・俯瞰的に物事をただ捉える「感知」

・起きている事実を客観的に観察し、把握する「観察」

・起きている物事の背景を洞察し、把握する「洞察」

・当事者としての感情に共感し、把握する「共感」

といったフローを追いながら、いくつものワークを行うことで参加者は自分自身と徹底的に向き合うことに。

まずはイノベーションに取り組むにあたっての自分の身体感覚、頭の中、気持ちを確認。それらの感覚をさらに精緻化して1枚の絵として直感的に表現したものを手掛かりに、いくつもの問いやワークを踏まえてひとりひとり認知を深めていきました。

各ワークの後には、これからの社会変容に重要となるファクター「トラスト(信用・信頼)」という概念を紹介。物理的な距離をモビリティ(動力)が、時間的な手間をデジタル(情報技術)が解決した今、心理的な壁を越えるためのトラスト(信用・信頼)こそ重要だと渋谷氏は話します。

トラストは心理的安全性を創り、そして、心理的安全性は良質な“気づき”を創る……イノベーションを起こすためには、そんなトラストを扱うことができる社会に変容する必要があるのです。 最後には、参加者がひとりひとり、この日に得た気づきと、その気づきを誰に伝えていくかを全体に向けて発表。それぞれの決意を全員で共有しました。

「他人と自己が持っている“想い”のギャップを埋めることの難しさを感じた」

「自分たちの事業が誰にとっての、どんな課題を解決しているのか、職場のメンバーとも共有しながら考えていきたい」

「イノベーションやDXと言っても、肝心の“人”が変わっていかないと現実は変わらない。自分自身が最初に変わって、いろいろな人を巻き込んでいきたい」

など、ひとりひとりが強い想いを披露しました。

これにて、第1回目の地域共創ラボは終了。

プログラム中はマスク着用やこまめな消毒など、新型コロナウイルス対策を徹底した上で開催しております。 次回は、2020年12月12日の開催を予定しております。それまでに、今回の復習と次回の予習イーラーニングに取り組み、自分自身を掘り下げて何をしたいのかを言語化していきます。