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2022年02月18日

【イベントレポート】NAGANO STARTUP STUDY Vol.6 他では聞けない現役起業家のここだけの話 ゲスト:SHE株式会社 代表取締役CEO/CCO 福田 恵里氏

■NAGANOスタートアップスタディとは?

社会の変化が激しい今、「起業」という選択肢を持って生きて欲しい。「起業」という手段を持って、社会課題の解決に力を注いで欲しい。そんな思いを学生や若手社会人に伝え、NAGANOから1人でも多くの起業家を生み出すことを目指して企画しています。現役で活躍しているベンチャー起業家をゲストに招き、KDDI株式会社 地方創生推進のトップが「ここでしか聞けない話」を聞き出す、リアル対談会。ゲストの経験や活動に対する質問、自身が抱えている起業への悩み、不安などの相談等もリアルタイムで投げられるのはオンラインならではです。

■NAGANOスタートアップスタディ 第6回目のゲスト

SHE株式会社 代表取締役CEO/CCO 福田 恵里氏

<プロフィール>
1990年 滋賀県出身。
大阪大学在学中、サンフランシスコ・韓国に留学。学生時代に初心者の女性向けのウェブデザイン講座を立ち上げ、300名以上が受講。2015年リクルートホールディングスに新卒入社し、ゼクシィやリクナビのアプリのUXデザインを担当。2017年4月、26歳の時に、ミレニアル女性向けのキャリア支援を行うSHE株式会社を設立。主要事業である「SHElikes」は累計受講者3万名を突破。2020年に同社代表取締役/CEOに就任。現在は一児の母。

■対談者

KDDI株式会社 経営戦略本部 副本部長 理事 松野 茂樹
(兼 KDDIラーニング(株)代表取締役社長)

<プロフィール>
2003年以来、一貫してM&Aを担当。2010年に経営戦略本部企業戦略部長に就任し、ベンチャー企業への出資やM&Aも担当。大企業によるベンチャーとのオープンイノベーションの先駆けとなるKDDIのベンチャー投資ファンド「KDDI Open Innovation Fund(KOIF)」の立ち上げ企画の他、ソラコム、nanapi、LUXAなど数々のKDDIによるベンチャー企業のM&Aを実施。2019年からはKDDIの地方創生の全社統括も担当

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第6回目のゲスト福田さんとKDDI 松野による「他では聞けない現役起業家のここだけの話」をテーマにオンライン対談を行いました。

(対談フルバージョンの動画コンテンツは、Facebookグループ「信州起業家情報プラットフォーム」SKIPに登録いただくことで視聴できます。)

■~初めに~

福田さんからご自身の学生時代から起業に至る経緯や、SHEのことについてお話しいただきました。参加者の方からは多くの質問が寄せられ、それに答えていただきながら、進めていただきました(以下、敬称略)。

◆ご自身のこと~学生時代~

大学時代は、どちらかというと意識の低い大学生活を送っていました。ストリートダンスサークルやバイト、飲み会に明け暮れ、自分を変えなければと思いつつも、やり方が見つからず焦りが募る日々を過ごしていました。そんな時 大前研一さんの本を読んで、一つの言葉に出会いました。

「人間が変わる方法は3つしかない 時間配分・住む場所・付き合う人を変える」。

変わらなきゃ、という気持ちだけではなく、3つのうちどれかを変えて見ようと思い、住む場所を変えることを選択しました。大学を休学してアメリカのサンフランシスコに留学し、そこで人生の大転機が訪れました。最初は英語を勉強するだけのつもりでしたが、シリコンバレーで起業家という存在に初めて出会い、その人たちへの猛烈なあこがれから始まりました。

そこで、アプリやwebサイトサービスを作るには、技術としてデザインやプログラムが必要ということを初めて学び、帰国後それらを猛勉強しました。誰かの仕事を手伝いながらも成果がお金になることを経験し、「自分も捨てたものではない」というような自己肯定感を得ることができました。そのような中で、学んでいる時にぶつかった壁がありました。それは、技術を学びに行ったどの勉強会でも男性しかいなくて、女性は自分だけという場面が大変多かったということです。

当時、女性エンジニアは7%しかいない時代。アイデアを形にする技術はとても素敵なものなのに、テクノロジーに従事する女性が少ないことに課題意識を持ちました。そこで、初心者の女性のためのwebデザインスクールを学生時代にプロジェクトとして立ち上げ、これがSHEの原型になっています。

普通にプログラミングを教えるだけであれば女性は来ないと考え、サーバーの説明をテディベアのキャラクターにわかりやすくさせるとか、開発の合間にヨガをしたりスイーツを食べたりなど女子会要素なども取り入れて、初心者女性も楽しく学べる工夫をしました。その結果、ここを通じてデザイナーになったりなどのキャリアチェンジをする女性が現れ始めて、人の人生をよりよく変える仕事であることを実感しました。オフラインだけでは人数が限られるので、インターネットの力で広く深くやりたいと思い始めたことが、起業に繋がってゆきました。

■SHE創業~

学生でいきなり起業する勇気はなかったので、ビジネスのイロハを学ぶために新卒でリクルート社に入社しました。多くのことを学び2年後に退職して、26歳の時にSHEを女性二人で共同創業しました。リーダー経験もなくビジネスも素人、人脈もお金もなく、はじめは貯金を食い潰しながら起業を始めてゆきました。手探りの中、個人で1億円もの借金を抱えるような苦難もありましたが、そのようなことを乗り越えつつコロナ禍でも、事業が追い風に乗って売り上げも会員も昨対比4倍に成長させていただきました。出産もあり、今は経営と子育てを両立しながら頑張っています。

■SHEについて~

働く女性の半分が出産を機に仕事を辞めているという状態の中、就労人口の男女差は変わらず、それでも給与総額は3倍の男女差があるというおかしな状況だと思っています。

出生率、労働力が減少している現状で、出産を選択しても自分らしく働き続けられる世の中を本気で作らないと日本のGDPを下げる一方だと思っています。

なぜ、この問題が解消されないかというと、女性の非正規雇用比率が高く、自立してどこでも働けるポータブルなスキルがないこと、日本の女性の自己肯定感が世界最下位というデータもあり、自分らしく働き続けるための「スキル」と「マインド」が圧倒的に足りていない現状があります。それを解決するのがキャリアスクールSHElikesです。

 ―動画を交えたSHElikesのご紹介―

◆SHEはどんなチームで、どんな思いでやっているのか~

新しい働き方を推奨しているので、正社員50名ですが副業などのスポットワーカーも含め300人規模の組織に拡大しています。創業3期目から新規採用を増やし、女性向きのサービス展開をしていることもあり、女性が80%を占める組織になっています。

SHEのビジョンは「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を創る」。このビジョンに共鳴し、会社にjoinしたり、受講生になってくれたりしています。

 -ブランドムービーの紹介―

◆SHEの歩み

事業をすることの存在価値として『固定概念を壊し、自分らしい生き方を勝ち得る「解放の伴走者」となる』。これを自分たちの役割として位置付けています。

2017年4月創業オフラインから始まりました。2年後にオンラインで、全国誰でも受講できるようにサービスリニューアルを行っています。その後、2拠点目のSHE Ginzaや、SHE Nagoya 、21年11月に大阪グランフロントにSHE Umedaを開設。4拠点をフラッグシップとして、全国・世界各国どこからでも受講できるようになっています。

キャリアのみではなく、他領域からも自分らしく生きるためのサポートを行ってゆきたいと思っております。ビューティーと金融という新しい領域から新規事業の展開も行っています。一辺倒な美容の学校ではなく、ビューティーの既成概念、“モテる”、“好かれる”という要素が強かったことを壊すビューティー領域、自分が好きになるための美しさをトータルプロデュースしてゆくスクールであったり、ファイナンスも資産形成や自分がありたい姿や理想の人生を定義したときにどのような資産運用がいいのかなどをパーソナライズしてゆくような、女性にとっての金融教育の民主化というようなことを掲げつつやっています。

◆どこを目指しているのか

コミュニティーの熱量を生かして、人生におけるすべての課題解決に伴走するプラットフォームになって行くことが私たちの目指す姿です。女性のキャリアのジェンダーギャップの是正をファーストステップとしてやっています。日本の根幹である、政治、教育、金融、テクノロジーで生じているジェンダーギャップや、都会と地方の格差など不均衡が生まれているレガシーな業界に対し、『格差と分断を是正してゆき「個人」の価値観、生き方を変革し続ける』そんな会社でありたいと思っています。SHElikesの受講生から「世界を変えるリーダーをどんどん生み出す」人口減少する日本を救ってゆきたい。さらに10年20年先を見て挑みたいこととして「義務教育のアップデート」を行いたいと思っています。

私が子供のころに受けてきた教育では、周囲と同じであることを求められ、小中高では与えられた正解を早く解く技術は磨かれてきました。就活などで社会に出ると「あなたの意志は」「あなたはどうしたいの」「あなたの個性は何ですか」などと、教えられて来たものと全く違う発想を求められることに違和感を感じました。子供の頃から自分で正解を見つけ出す力を身に着けてゆく必要があると思い、義務教育のアップデートの必要性を感じています。

■視聴者との質疑応答~

Q 福田さんは、とても自信に溢れているように感じました。自信はどこからきているのですか

福田)学生時代から自信に溢れていたわけではなく、自分の可能性に蓋をしていたタイプです。どうしたら自信が持てるか・・・にお答えすると

・エフィカシー:自己効力感 自分ならできると思えるような気持ちを持つこと
それを構成する要素が3つ①直接的成功体②代理体験②言語的説得です。
留学という行動をした、作ったものを発信したり、誰かがそれを喜んでくれたという
事で得られた、直接的成功体験。同じ立場にいる人が成功している姿を見る代理体験。
第3者の方から「できる、持っている」といわれること、これが言語的説得。
このセオリーに則って、自分からその環境をデザインしに行く事。

小さな積み重ねでいいので、自分との約束を守る、成功事例をたくさん見る、勉強会などに行ってみるのもいいと思います。また、夢を語った時に足を引っ張る人とは付き合わない、これを「Dream Killer」と呼んでいますが、このような人とは絶対に付き合ってはいけない。こうした人と距離を置いて、「できる」と言ってくれる人が周りにいる環境を自ら取捨選択して作ってゆくことで自信が磨かれて行きます。

自分で環境をデザインして行くことも、ある程度の年齢になればできると思います。

お金がなくても、無料のオンラインコミュニティ―など人と出会える場所はたくさんあります。そのようなところに顔を出して、ロールモデルや自分と違う生き方や価値観を持っている人を知りに行くなど。このような会(NAGANO STARTUP STUDY)に参加しているだけでも凄いアクションなので、その場に行くだけで世界が広がります。そこで自分の価値観が広がったり、目指したい姿が磨かれていったりして、自分にとって大切な人(親)に理解してもらうというステップに入ります。親の承認が無くてはできない、というのではなく、自分で動ける範囲で色々やってみて、確信が得られたらその後は説得し理解を得るステップに入ると思います。たとえ理解が得られなくても、自分が生きたい人生を歩むことが大事なので距離を置いてでも自分の夢を途切れさせない生き方が重要だと思います。

松野)大前研一さんの言葉に出会ったということが、福田さんの大きな転機になったということですか。 

福田)大きな転機でした。何者かになりたいけど何からすればいいんだろうと思ったときに、大前研一さんの3つのうち一つを試してみようというアクションに繋げることができました。何がやりたいかは行動して取捨選択してゆくことで得られます。始めの行動に移せるか移せないかで、その後のやりたいことが本当に見つかるかどうかの確度が変わってくると思います。

松野)住む場所を変える、付き合う人を変える。今はネットを使うと意外に簡単に可能ですね。

福田)ハードルは下がっていますね。何となく変わりたいな、現状に違和感あるな、という方にはまずは小さいところから、大前研一さんの3つのどれかをやってみるのはおススメです。

松野)まずはSHEでやってみるということも、3つの言葉につながるということですね。

Q 人の意見に流されてしまいます、自分の軸を持って生きるにはどうしたらいいですか。

福田)それは、ポジティブに言うと「人の意見を聞ける傾聴力の高さ」です。意思決定を人の意見に委ねるのではなく、いいところをポイント抽出しながら多様な価値観を受け入れることができるということではないでしょうか。人の意見を自分なりにオリジナリティのある意思決定に変えてゆくことで、自分で人生の手綱を曳いている感じになると思います。

自分にとって自分にしかない価値は何なのかということを内省化し、解像度高く見えていてそれに従って生きている方は、どんどん輝きを増していると思います。

自分にしかない価値がNo.1でなくてはいけないかというと、そんなことはありません。

ユニークネスを創るためのテクニックとして、ギャップを創るやり方があります。「アイドルなのに会いに行ける」など-自分の得意をキーワードにして-どう組み合わせたら自分にしかない価値を自分の中に確立できるかがとても大事です。それを言霊のように発信し続けてゆくと、それが現実になってゆくという引力が働くと思います。自分のユニークネスを磨き続けることで人の意見に意思決定を委ねるのではなく、いいところを抽出してオリジナリティのある意思決定に繋がってゆくと思います。

松野)ネガティブな人と触れ合わないことも、自分の軸を確立してゆく事になりますね。

〇〇しない方がいいよというアドバイスは聞かないほうがいいですね。

福田)経験を持っている人で、自分が正解を持っていると勘違いしている人が色々と言ってくる事がありますが、多くは夢を掴もうとしている人に対する嫉妬や羨望からくる気持ちから来ると思います。そのような足の引っ張りに付き合う必要もないので、その人とは距離をとったほうがいいです。学生時代にDesign Girlsを立ち上げたときに、キラキラ女子が集まって何かしているみたいに馬鹿にされたようなこともありました。見た目だけで判断される以外の大きな意義を信じていたので、そのような人とは付き合わないようにしたことが今の起業にもつながったと思っています。何か言ってくる人に変にマインドを揺さぶられたり、言われたから変えなくては、などということに固執しなくていいと思います。

Q 学生時代には起業を考えていなかったということですが、ゼロから一歩踏み出せたのはなぜですか。私は、出来ない、やらない理由を見つけて足踏みしてしまいます。

福田)原体験として、新卒でリクルート社に入社したとき学ぶことが多くありましたが、手触り感がない毎日が続いていました。何百万人も使うサービスのページ一つを自分が監修した時などは、「これは自分にしかできない事なのか、誰がこれによって人生が変わるのか」など自分の介在価値のようなモノへの手触り感がないことに課題意識を感じて起業に繋がりました。

この経験があったから自分のやったことで誰かの人生が良くなっている、「これが人生でやりたいこと」という感覚が得られたことが“ゼロ→1”に踏み出すことができた理由だと思っています。リクルート社に入っただけで、起業したいという思いだけで、踏み切ることはできなかったと思います。最初から大きなことをしようと思わなくていいです。“石の上にも3年”いなくていいです。つまみ食いでも経験を積んでいく中で、腰を据えてやりたいことを見つけてゆくことでいいと思います。

松野)留学の仕方に興味があるのですが、起業家エンジニアに会いに行くためにサンフランシスコ留学したのですか。

福田)そのような考えは一切ありませんでした。スタートアップという言葉すら知りませんでした。点と点、“コネクティングドッツ”だと思います。何か大義がなくても、まずは行動を起こしてみることが点でつながって、今のキャリアに結びついていると思います。

出会う人によってこんなに世界が広がることを実感しました。帰国後、大阪の大学に通っていましたが、当時関西ではまだスタートアップなど少なくて、SNSをフォローしまくって、東京の起業家にDMを送りまくって、それでも10人に一人くらいは会ってくれるので毎週のように格安の夜行バスに乗って会いに行ってました。

松野)本日参加の方には、勇気を持って繋がって行くことは非常に大事なことと申し上げます。反応してくれる人は必ずいます。

福田)新規事業の成功は10%といわれますが、10回は失敗してやるぞ、という勢いでやってみるのがいいと思います。

Q ものづくりの仕事をしています、今多くのモノであふれている世の中ですが、その中で

オリジナリティを見つけるためにはどうすればいいでしょうか。オリジナリティとは何だと思いますか

福田)自分に何ができるのかを自分にとってwillもあればcanの部分もある、生甲斐のフレームワークにある項目に合わせて何が出来るのかを書き出したときに、ギャップ法で〇〇なのに〇〇など掛け算していって、自分のユニークネスで世の中に自分というアイデンティティーを証明してゆきたい、というモノを作って行くということはあります。

起業に原体験は絶対にあったほうがいいと思うのでアイデンティティーやオリジナリティを作って行くといいと思います。起業とか経営って、人が辞める、事業が伸びないなど、シンドイことの方が多いのですが、そのようなプレッシャーの中で日々やっているときに単なるマーケットインの思考でトレンドだけ追い求めて起業しているとハードシングスが起こった時にやる意味を失ってしまいます。そんな時に自分の人生に、ミッションと起業した目的が紐づいていると歯を食いしばってやっていけると思ったりもします。自分が生きてきた道を振り返った時にどんな原体験があり、思いが形作られてきたのか見つめなおして、今自分が持っているスキルアセットを掛け算するなどして、ストーリーを作って行くとオリジナリティが生まれると思います。作り手のオリジナリティが、商品・サービスにストーリーが感情をもって乗ってくるのかなと思います。機能性だけでみていると、どんどんコモディティ化してしまいます。いかに自分の価値を結び付けられるか、考えていただけるといいと思います。

Q 自意識過剰と自己肯定感は似ているのかなと思います。この違いについてお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

福田)自意識過剰はそんなに悪いこととは思いません。以前空気読まないKYとうい言葉がはやりました。あの言葉は本当によくないと思います。空気なんか読めなくてもいいと思います。

日本人は協調性とか人と同じであることが教育システムでインストールされ過ぎているので、逆に自意識過剰ぐらいで構わないと思います。今の実力に見合っていなくても、自分ならもっと才能が有るはずなどのポジティブな思い込みはいいと思います。それが絵空事にならないことで、自意識過剰と自己肯定感の違いになると思います。

自意識過剰の人は、成功体験など積まずに意識だけが先走っている人なのかなと思います。

始まりとして自意識過剰はいいですが、中長期に見ると”ずうっと意識しかない”感じになってしまうと置かれている状況は何も変わらないと思います。行動せずに意識だけ大きくなっているパターンですね。

Q 知らず知らずのうちに自分にかけた「不自由な呪い」という言葉にハッとしました。

 自分自身の心根に正直に向き合い、心の声を聴くコツはありますか。

福田)自分のことは自分がよく分っていると思いつつも、自分の思考の枠以上は超えられない側面もあると思ったときにコーチングを受けました。自分の持つ答えを、第三者であるコーチからの適切な問いによって引き出してくれる。自分も予期しなかったあり方や、ゴールを定義してくれる手法です。第三者に自分の思考の棚卸をしてもらうなど、有効だと思います。

Q 起業してゆく中で、この人と出会ったことで変えられたと思う人はいますか 

福田)たくさんいます。コーチングによって人生変えられたと思いますが、今でも「私なんか・・・」などと思ってしまうことはあります。ちょうど10か月くらい前に優秀な方が多く入社して来て、本当に自分が代表でいいのかなどと自信を無くしてしまう時期がありました。仕事が楽しくなくなっていた時期に、仲間からエグゼクティブコーチを紹介していただきました。その方にコーチングを受ける機会を経て、固定概念にまみれていた自分に得意な部分を生かせる仕事しかしないと決めることができて、代表にしか出来ないことにフォーカスしてやると決めたことで色々な事がうまく回りだしました。些末な思いに囚われなくなり、楽しく仕事ができるようになりました。

経営者や起業家は、上司がいないので孤独を感じることが多いんです。私は感じたことはないですが。周りが全て利害関係者に見えてしまうこともあり、相談できずにメンタルを壊してしまう人もいます。利害関係なく相談できる立場の人を活用することが、スタンダードになればいいと思っています。

Q 福田さんにとって最高な生き方をしていると思う女性はどんな方ですか

福田)ロールモデルとしてDeNA会長の南場智子さんですね。サンフランシスコから帰国する飛行機の中で、学校経営に関する文書を読み心が震えました。そこから起業に興味を持ったということはありました。自分の出来ることの幅とか、世界を広げて今の自分にできる半歩先のことにチャレンジしている人として素敵な生き方をしているなと思います。

私もゆくゆくは、一会社だけにとどまらない新しい社会のカルチャー・仕組みを作るところにどんどん派生させゆきたいと考えています。大きなビジョンを描いたときに、自分のフィールドと幅を広げていって自分の限界に挑戦し続ける人は、自分のありたい生き方とマッチしているので最高の生き方をしてるなと感じます。

松野)女性の起業家は、女性自身が自己肯定が低い、社会的にも壁がある中で、現実に立ち向かうには何倍も力を使うだろうなと思いますし、輝いて見えます。欧米のように、国の代表が女性など当たり前になっています。日本も早くそうならなくてはいけないし、女性活躍の場は無限にあると思います。

福田)地方の女性にこそSHElikesで学んでほしい。東京の仕事も地方に住みながら出来たりします。SHEで働いている方でも、カナダや北海道在住の方もいらっしゃいます。都内在住の方は少ないんです。自分自身も滋賀県出身なので都会との情報格差、機会提供の少なさに課題意識を感じながらこの事業を行っているので、オンライン化が進んで学習も働き方も柔軟化が進んできた今こそ、地方にいる女性たちがスキルを学んでどこででも働けることを証明するなど垣根をなくして行くことが、日本の国力向上に繋がって行くと思います。長野のこのような取り組みもそうですが、地方の女性のスキルアップにはフォーカスして取り組んでゆきたいと思っています。

Q 仕事と子育ての両立について、起業して経営している中で解消できた課題はありますか

福田)自分にとって重要なことは、優先順位を決めること。家族も仕事も両方大事。どっちも諦めない手段を選択する時に逆算して考えました。自分が時間をかけていることで、やりたくないことが家事であると思いました。掃除、洗濯などは、Have toでやっていることでした。パートナーとこのことで喧嘩することもありました。解決策を考える中で、役割分担の可視化がゴール設定になりそうと考えた時、パートナーから理想の自分たちの在り方は“家事をしない”というゴール設定の提案がありました。IoT家電を活用してできることをやる、人でなくてはできないことは家事代行を頼むことで両立ができるようになったと思います。家事代行はお金持ちのサービスと考えがちですが、そんなことはありません。週に1回頼むことで、料理、洗濯など家事の効率化ができ、育児と仕事の両立に効き目がありました。パートナーの理解を得ることも大事なので、対話を重ねてパートナーとの理想の関係性、ありたい姿を一緒に探し求めました。お互い時間とパワーがかかる部分を両立するための土台となりました。対話は非常に大事です。

Q 学生プロジェクトとして地域課題の解決に取り組んでいます。卒業後も続けたいのですが、それがビジネスとして続けていけるか不安です。

福田)卒業後も是非続けていただきたいと思います。私も大学卒業後、いきなり起業が怖かったのでリクルート社に入りましたが、これがよかったなと思いました。リクルート社は副業がOKなので、副業申請して個人プロジェクトとしてDesign Girlsを続けていました。卒業後、自分のやりたいことに近いような企業に入って、安定的な収入を得つつ個人プロジェクト的にやりたいことをやって行くことで、それ一本でやれる状態につながるかもしれない。どんな形でも続けることでいつか実るということに繋がってゆくと思います。

松野)今後は多くの企業が、副業を認める方向になると思います。学生起業経験は企業にとっても欲しい人材です。質問者のように、地域の課題解決を既に経験している人は、企業が大変に欲しがる人材です。企業が欲しい人材は、問題解決ができる人材です。書類づくりができる人ではありません。ただし、やりたい仕事に近いことをやって、仕事を好きにならないとつらいですよね。

福田)20代前半から就業するとして、人生の60%くらいは仕事に費やすことになります。

それが自分のやりたくないことなんて、凄くもったいないですよね。自分がこれをやりたいと思えることにトライしてもらえると嬉しいです。

Q 福田さんが10年前の自分にアドバイスするとしたら何ですか。

福田)一言、「世界は広い」と言いたいですね。「ここにしか自分の世界はない」これが言えるということは、外に世界が広がっていることをメタ認知しているからこそ言える事です。

当時はそれを思わないくらい世界が狭かったと思います。高校生、中学生の時期に、敷かれたレールに沿って進んでいたバイアスをもっと早くに壊せていたら、今の私はもっとすごいことになっていたかなと妄想することもあります(笑)。自分の可能性に蓋をせずに、妥協せずやりたいことに挑戦して欲しいと言うと思います。

Q 経営者として大切にしていることは何ですか

福田)難しい質問ですね・・・。起業時に思っていたことは、今までの10年間にはなかった新しい30年後の、当たり前になるカルチャーを作ることをやりたいと思っています。ミクシーやiPhoneみたいな、10年前は誰も持っていなかったものがいまやインフラになっていて、それがカルチャーになって時代を作っています。経営者として、新しい時代のカルチャーを創って行くことは凄く大事にしているポイントです。組織を作るうえでは、愛と想像力をもって目の前の人に接するということ。相手の立場に立って想像力を働かせることなくして個の能力の拡張はないかなと思い、それを大事にしています。

Q 学生時代にやっておいたほうがいいことは何かありますか。併せて今日参加の学生さんたちにメッセージをお願いします。

福田)留学で世界の広さを感じて、“自分とは何なのか”というアイデンティティーを振り返る契機になりました。学生時代は学びに投資する時間は多いので、学生時代にデザインとかプログラミングなどクリエイティブの勉強をしていたことは非常に良かったと思います。サービスを創れること、どんな職種についてもアイデアを形にできるスキルは凄く汎用性が高くて強いものです。学ぶのに時間がかかるスキルは、学生時代に身に着けておくと自分を助けてくれるスキルになると思います。

福田さん、楽しいお話をありがとうございました。長時間お疲れ様でした。

◆終わりに

講演では、このレポートで紹介しきれない内容もたくさんあります。是非、動画アーカイブをご視聴ください。

過去の起業家講演会(STARTUP STUDY)のアーカイブ動画も公開しています。

ガイドからご覧ください。